「サマーウォーズ」日本人が忘れかけたSNSより大切なものとは?
こんばんは、東野です。 漫学は、アニメや漫画の世界を文学のように紐解くことで、作者からのメッセージをより深く理解していきます。本日の作品は「サマーウォーズ」。
「つながり」こそが、ボクらの武器。
今回は、「時をかける少女」「おおかみこどもの雨と雪」の細田守が監督している「サマーウォーズ」の解説。 本作品のメッセージを紐解く鍵を、3点、ご紹介します。
- 最強の人工知能 VS 人類
- 応援してくれる人とのつながり
- 家族のつながり
最強の人工知能 VS 人類
FacebookやLINEのようなSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が乗っとられた。というのが、本作品の設定だ。最強の人工知能が次々とアカウントを乗っ取っとられ、現実社会でつぎつぎと問題が起こっていく。
そんな時、人類はどう立ち向かっていくべきなのか? 人工知能ラブマシーンとの対決は、最初は佳主馬が一人で戦うも敗れ、次に陣内家の男性陣らで戦うも敗れ、最終的には世界中の人々が加勢してやっと勝利する。
人間一人一人の存在は小さなもの。しかし親戚一同の力が結集し、世界中の人と一体となることで、より強い力を発揮することができたのだ。
キャッチコピーにもなっている「つながり」は、確かに人類の最強の武器なのかもしれない。 ラブマシーンで混乱する中、おばあちゃん(陣内 栄)は一人ひとりに電話をかけ、
「あんたならできる。できるって」
と励まし続ける。
大事なのは昔のように、人と人とが声をかけ合ってコミュニケーションをとること。
今日、我々の生活はメールやSNS上だけのコミュニケーションになりがちである。 お盆や年末に帰省が減少したり、家族の誕生日などをメールですませてしまったり、会話をしたり、対面でコミュニケーションをする機会が減ってきていないだろうか。 オレオレ詐欺やLINEアカウント乗っ取りは、SNS、メールによるコミュニケーションの減少やインターネット依存から生まれてきたものだ。 サマーウォーズが「SNSの乗っ取り」「つながり」を映画のテーマにしたのは、私たちのSNSや「人とのつながり」に対する向き合い方へ、細田守から警鐘が鳴らされているということなのだ。
つながりがあるから、人は強くなれる
「サマーウォーズ」は登場人物の数が多いので見過ごしがちだが、キャラクターを横串で考えると、それぞれの物語がよくわかる。ここでは、主人公の小磯 健二と「キング・カズマ」の池沢 佳主馬に注目してみる。
小磯 健二
主人公の小磯健二は、数学オリンピックの日本代表に惜しくもなれなかった。 ラブマシーンから送られてきた暗号を最初は誤って解答するが、2回目の暗号では正しく解答することに成功し、物語の最後では、みんなが応援する中で、3問連続で正解する。(3問目は暗算)
池沢 佳主馬
格闘ゲームの世界的チャンピオンの「キング・カズマ」。しかし人工知能ラブマシーンとの最初の勝負には敗れてしまう。 2回目のラブマシーンと試合では、陣内家の男性陣らの協力もあったが惜敗。3回目はみんなに支えられながら、ついに、ラブマシーンへトドメをさすことに成功する。
健二も佳主馬のように、実際には個人で行っていることでも、応援してくれる仲間が増えることで高いパフォーマンスを出している。 陣内 栄の遺言がそれを物語る。
「一番いけないことは、一人でいること」
私たちは、誰かと一緒にいることで、それだけで、力をもらっているのかもしれない。
人類最古のネットワーク 「家族」の力
この作品のテーマは「家族とのつながり」だ。 主人公の健二は、父親が単身赴任中、母親も仕事が忙しいため家では大抵一人だった。そういう家庭が増えてきた現代社会。
人と人とのつながりが希薄になりやすい現代社会だからこそ、人類はもっとつながりを大切にすべきだ。 SNSで世界中の人とつながることも大切。でも、家族とのつながりも大切。 「サマーウォーズ」は、細田守からそんなメッセージが込められた作品である。 陣内 栄の遺言で今回の記事を締めよう。
「家族同士、手を離さぬように。人生に負けないように。」 「私は、あんたたちがいたおかげで大変幸せでした。」