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【ネタバレ】「寄生獣」あなたの右手に寄生獣がくるまでに知っておきたいこと

 人間1種の繁栄よりも生物全体を考える!!そうしてこそ万物の霊長だ!!

人間どもこそ地球を蝕む寄生虫!!いや・・・・・・寄生獣か!

 

寄生獣」は、人間の脳に寄生することに失敗した寄生獣が、人間の右手に寄生することから物語が始まる。

 

物語は徐々に人類VS寄生獣へと進んでいくのに対して、人間の泉新一と寄生獣のミギーが共生を通じて、同化が進んでいく

 

■「寄生獣

寄生獣」とはなにか?

近代は、「人間」と「動物」が区別された時代である。

人間は特別な存在として、他の生命とは違い文明を持つ。

 文明は進歩し、人類の生活はどんどん豊かで便利なものになっていく。

 

それは、人類にとってものすごく喜ばしいことだけど、地球としての観点では必ずしも喜べることばかりではない。

環境破壊が進み、他の生物が殺され、生態系が乱れる。

 

人類は特別な存在なのだ。

 

寄生獣は、そんな思いあがりや勘違いをぶち壊してくれる。

 

「人間」という不可侵の領域の内側と外側を繋いぐことで、

寄生獣は、「人間」と「それ以外の生物」の媒体の役割をし、境界線の脆弱性を指摘しているのだ。

 

人類は「寄生獣」と共生できるのか?

人間は、独立した生物である。というもの、一つの誤った考えといえないだろうか。

 

例えば、人体には無数の菌がいて、彼らと共生することでバランスをとっている。

 

殺菌性の高い石鹸での手洗いやウォシュレットの使い過ぎは、本来人体必要な菌まで洗い流してしまうとも言われている。

 

それでも、私たちは清潔や殺菌に夢中になる。

 

手を殺菌する。衣類を殺菌する。空気を殺菌する。

TVでもCMなどでやたらと殺菌を強調した表現がある。

その根底にあるのは、人体の独立性を神話のように信じてやまない人間の外部の生物に対する異常なまでの敵意である。

 

人体には、既に寄生獣がいる。というか常に寄生獣はいる。

しかし、私たちは、普段彼らの存在を無視して、というか排除しようとして生活している。

本来、人体には、彼らとの共生が必須であるにも関わらず、

 

曖昧になる境界線が伝えるもの

 

ヒロインの村野 里美は、泉に対して言う

「君本当に泉くん……だよね?」

 

自分のことを人間だと思っている泉だが、心身ともにミギーの影響を受けて、徐々に純粋な人間でなくなり、人間と寄生獣の境界線を越えていく。

 

身体だけでなく思考も寄生獣の残忍さが身についていく泉は、

事故で瀕死の犬を憐れむ一方で、犬を死体をゴミ箱に捨てようとするなど、「人間らしさ」を失っていく。

 

最後の後藤との決戦の際に一度はミギ-と分離するものの、最終的にはミギ-と合流を果たし、やがて完全にミギーは右手として完全な同化を果たすことになる。

 

寄生獣」からは聞こえてくるのは、そんな「人間」や「人類」が特別な存在であり、そして独立しているという思いあがりに対する警告なのである。