漫学:アニメや漫画を哲学のように紐解くサイト

アニメや漫画の時代背景などを紐解いて、もっと深く楽しめるサイトです。ビジョン:日本を代表する文化である漫画・アニメの新しい見方を世界中に広げていくこと。ミッション:学びとなる知識や教養の発信することで、漫画・アニメに新たな価値を付与する。

崖の上のポニョネタバレ考察「私たちはペットを本当に家族として扱えているのか?」

金魚だったはずのポニョは徐々に人間となっていく。動物と人間の境界を曖昧にする。「崖の上のポニョ」が伝えたかったのは、家族としてのペットのあり方だ。

いらなくなったペットを捨てたり、殺したりする人がいる。だけど、本来ペットは家族の一員であり、人間の都合で好きにしていいはずがない。

児童向けの印象も強い「崖の上のポニョ」だが、本当は大人へのメッセージなかもしれない。

 

作品テーマ:人間と動物の関係

 

f:id:manganogakumon:20151125233851j:plain

ポニョとは?

5歳の男の子の宗介はある日、海辺で金魚と出会う。この時点では名前がなく、ポニョは金魚として認識されている。

f:id:manganogakumon:20151125233903p:plain

  

 

金魚の姿をしたポニョ

はじめは金魚だった

宗介は金魚にポニョと名前を付けることで、特別な存在として、ポニョを認識するようになる。名前を付けた時、彼にとってポニョは単なる金魚ではなくなったのだ。また、保育園の同級生の女子に「金魚」と指摘された際に「金魚じゃないよ、ポニョだよ」というセリフは、名前を付けることにより、対象へ愛情が湧いていることを印象づけるシーンとなっている。名前を付けることから、宗介とポニョの関係が始まるのだ。

徐々に人間になる

そんな宗介とポニョだが、ポニョの父親であるフジモトは、ポニョを海に引き戻してしまう。

f:id:manganogakumon:20151125233917p:plain

  

 

半魚人姿のポニョ

 フジモトの元に戻ったポニョは、宗介の元に戻ることを決意。徐々に半魚人や人間の姿に変わっていくようになる。

f:id:manganogakumon:20151125233934p:plain

  

 

人間の姿になったポニョ

 ポニョの姿が、金魚 → 半魚人 → 人間に変化することで、人間と動物の境界線を曖昧になっていく。さらに、宗介とポニョが単なる「人間と動物」の関係ではなく、「生き物と生き物」という対等な関係となっているのだ。

古代魚は生命の原点を表す

その後、母親のリサを探すため、津波で沈没した街へと旅立つポニョと宗介。

f:id:manganogakumon:20151125233946p:plain

  

 

母親のリサを探しに行くポニョと宗介

 この時、海の下には、古代魚がたくさん生息しているが、これは、今回のテーマである(人間と)生き物の本来のあり方を見直すために、生命の原点を印象付けている。

願いが叶ったおばあちゃんたち

やがて、宗介とポニョは海底にある老人ホームにたどり着く。そこには、元気に走り回るおばあさんが登場するが、これは作品の冒頭での「宗ちゃんみたいにかけっこ出来たら」という彼女たちの願いが叶ったのだ。

f:id:manganogakumon:20151125233958p:plain

  

 

元気に走り回るおばあさんたち

グランマンマーレに対する宗介の答え

その後、「(ポニョが)人間になるには、本当の姿を知りながら、それでもいい男の子が要る」というグランマンマーレ(ポニョの母親)に対して、「僕、お魚のポニョも、半漁人のポニョも、人間のポニョもみんな好きだよ」と、ありのままのポニョを受け入れる宗介。そこには、人間と生き物の差別は存在しない。ポニョと宗介はキスをして、無事に人間となり物語は終わる。

崖の上のポニョが伝えたかったのは、家族としてのペットのあり方

物語の背景には、ペットの放棄、ペットの殺処分問題などがあるのではないだろうか。現代人は、生き物をモノのように扱う。モノの使い捨てが進む世の中で、生き物であるペットまでもが、都合のいいように扱われている。 しかし、ペットとは家族だ。生き物も人間と変わらない。それはポニョも同じ。ポニョは(たかだか)金魚。それでも宗介にとってポニョは大切な家族なのだ。だから、同じ生き物として宗介はポニョと向き合う。そこには、人間とペットの本来あるべき姿が照らし出されている。

f:id:manganogakumon:20151125234009j:plain

 ペットショップにいる可愛らしい動物たちは、時に人間の都合で買われて、捨てられ、殺されてしまう。だから、もっと、ペットを大切にしよう。ペットだって、人間と同じ生き物なんだ。そんなメッセージが聞こえる作品だ。