漫学:アニメや漫画を哲学のように紐解くサイト

アニメや漫画の時代背景などを紐解いて、もっと深く楽しめるサイトです。ビジョン:日本を代表する文化である漫画・アニメの新しい見方を世界中に広げていくこと。ミッション:学びとなる知識や教養の発信することで、漫画・アニメに新たな価値を付与する。

「天元突破グレンラガン」エンジニアよ、大志を抱け!

こんにちは、東野です。 このブログでは、アニメや漫画の世界を文学のように紐解くことで、作者からのメッセージをより深く理解していこうとしています。本日の作品は「天元突破グレンラガン」について。

f:id:manganogakumon:20151125225204j:plain

天元突破グレンラガンは、2007年に放送されたロボットアニメ。地下で穴を掘るだけの毎日だったシモンは、カミナとともに地上の世界へ行き、やがて宇宙の運命に風穴をあける。

作品のテーマは「変革vs安定」

人類が進化すれば、人口が増え、増えた分だけ自然を破壊し、住む場所を争わなければいけない。人類は進化に対してどのように向き合うべきなのか。 成長を抑えて我慢して生活する安定を求めるべきなのか、それともリスクをとって変革に挑むべきなのか。作品は問いかける。

シモン=Apple創業者・ウォズニアック

主人公のシモンは暗い洞窟の中、黙々と作業をこなす。特技は穴を掘ること。

f:id:manganogakumon:20151125225214p:plain

「毎日、毎日掘ることだけが俺の仕事だ」

地味で地道な毎日を過ごすシモンを周囲の女子は「きもい」「臭い」と馬鹿にする。

f:id:manganogakumon:20151125225229p:plain

「やだー、穴掘りシモン」 「毎日毎日、土まみれになってなにが楽しいんだか」 「キモいよね」「臭いしね」

しかし、そんなシモンに対して、同じ地下で暮らすカミナは、言う。

f:id:manganogakumon:20151125225244p:plain

「お前のドリルは天を突き破るドリルなんだよ!」

カリスマリーダーのカミナと、天才エンジニアのシモン。この二人が紅蓮団という組織を創り、ラガンという機械を手に入ることで物語は始まる。 一見出来すぎた作り話のように思えるかもしれないが、どこかアップルの創業期を彷彿させる。 1976年、アップルは創業期に、カリスマ性のあるスティーブ・ジョブズとエンジニアのウォズニアックがアップルコンピュータを設立し、「Apple I」を製作する。 ジョブズとウォズニアックの二人で始まったアップルの主役は、ジョブズになるだろうが、一方で「天元突破グレンラガン」の主人公シモンは、ウォズニアックタイプの人間だ。 この作品はシモンのように、毎日を地道な作業をしているエンジニアに向けられた物語だ。

作品のメッセージは、「Think different」

天元突破グレンラガンは地下で毎日穴を掘っていた少年が、カミナと共に次々と仲間を増やし、やがては全宇宙を巻き込んだ戦いに挑むという物語である。カミナは既成概念にとらわれず、トライアンドエラーを繰り返して紅蓮団を牽引していく。

f:id:manganogakumon:20151125225256p:plain

常識破りで、既成概念にとらわれない紅蓮団のやり方は、最初は「バカだ」「無茶だ」と否定される。 さらに紅蓮団には常に対立する存在がいる。ジーハ村の村長やマギン村の司祭、ロージェノム、アンチスパイラル。 変革を恐れ抵抗する人間は、現実の世界にも、たくさんいる。だが、彼らは決して世の中にとって悪な存在ではない。安定を望む存在のほうが、マジョリティだろう。

f:id:manganogakumon:20151125225309p:plain

リーダーだったカミナの兄貴の戦死。仲間からの裏切り。その他にも、紅蓮団には様々な困難がつきまとう。

f:id:manganogakumon:20151125225321p:plain

しかし、真に世の中に変革をもたらす者は、そこで立ち止まったり、恐れたり、諦めたりしない。

f:id:manganogakumon:20151125225336p:plain

「いけ、シモン。もしとか、たらとか、ればとか、そんな思いに惑わされるな。自分が選んだ一つのことが、お前の宇宙の真実さ。」

穴を掘る毎日だった少年は、やがてカミナの言う通り本当に「天を突き破る」。 カミナの強烈なリーダーシップとビジョン、シモンの高い技術力と気合い、そして多くの仲間と共に、様々な困難を乗り越えて大宇宙で変革をもたらす物語は、世の中に変革をもたらそうとした挑戦者へのメッセージだ。 最後に、変革に挑戦したApple Inc.の1997年のスローガン『Think different』で、今回の記事を締めよう。

『Think different』 Here’s to the crazy ones. The misfits. The rebels. The troublemakers. The round pegs in the square holes. The ones who see things differently. They’re not fond of rules. And they have no respect for the status quo. You can quote them, disagree with them, glorify or vilify them. About the only thing you can’t do is ignore them. Because they change things. They push the human race forward. While some may see them as the crazy ones, we see genius. Because the people who are crazy enough to think they can change the world, are the ones who do. クレージーな人たちがいる はみ出し者、反逆者、厄介者と呼ばれる人達 四角い穴に 丸い杭を打ち込む様に 物事をまるで違う目で見る人達 彼らは規則を嫌う 彼らは現状を肯定しない 彼らの言葉に心を打たれる人がいる 反対する人も 賞賛する人も けなす人もいる しかし 彼らを無視することは誰にも出来ない 何故なら、彼らは物事を変えたからだ 彼らは人間を前進させた 彼らはクレージーと言われるが 私たちは天才だと思う 自分が世界を変えられると本気で信じる人達こそが 本当に世界を変えているのだから

コラム:ニアは2Dキャラクター!?

ヒロインのニアは、螺旋王に人形のように捨てられ、物語の後半で通常の人間ではなく、「仮想生命体」であることが判明する。ニアは、アニメとかゲームの女性「2Dキャラクター」のメタファだ。

f:id:manganogakumon:20151125225351p:plain

彼女の言動や外見(特に瞳)に、どことなく他のキャラクターよりも2Dらしさが強調されていることにも納得がいく。 エンジニアであるシモンがニアを恋する対象とするのは、エンジニアへの偏見だろうか。しかし、物語の最後でシモンとニアは結婚式を挙げることになる。ニアは結婚式の途中で消えてしまうが、作品は、シモンとニアの結婚を否定的には描くことはなかった。

f:id:manganogakumon:20151125225405p:plain