引きこもりの人生はなぜ楽しくないのか?「四畳半神話大系」
今回は、森見登美彦さんが原作「四畳半神話大系」について、解説をしていきたいと思います。
■本日の作品は「四畳半神話大系」
人生は選択肢が重要ではない。
「四畳半神話大系」は、京都大学の3回生が1回生の時に選んだ選択肢(主にサークル)によって、
その後どのような大学生活を送ることになるのかという仮想世界がパラレルワールドとして繰り返される。
テニスサークルで失恋、
映画サークルで先輩に反抗、
自転車同好会で体育会系の経験、
先輩に弟子入りして闇鍋などの試練、
ソフトボールサークルで新興宗教のような体験
英会話サークルで貞操の危機、
ヒーローショー同好会で駆け落ち、
読書サークルで文通、
大学の秘密機関でビジネスに成功、
と
おおよその大学生が体験しそうな経験を体験しつくしていくも、
そのいずれも満足にいかず次の可能性へと話は転々をしていくが、
結局、どの選択をしても理想のキャンパスライフにはたどりつくことがない。
大学8回生の樋口 清太郎の言葉で言えば
「薔薇色のキャンパスライフなど存在しないのだ。なぜなら世の中は薔薇色ではない。実に雑多な色をしているからね。」
一見すると人生というものは、選択肢こそが大切のように思えるのだが、
実際には、どの選択肢であっても一定の満足感と不満が生じるものなのである。
人生で大切なものとは?
主人公は、最期にどのサークル(同好会)も選択することなく、自称「四畳半主義」の引きこもりになる。
そうして初めて、引きこもり以外の選択が、いかに素晴らしいキャンパスライフであったかを知る。
主人公は、引きこもりになった際に、四畳半の世界に閉じ込められて、なんども一人で大きなカステラを食べる羽目にあう。
※本編でも話があるが、大きなカステラを一人で食べるということは、孤独の極地でる。
そうして、四畳半の世界で、主人公は初めて気がつく。
どのサークルを選んでも巡り合い悪友となる小津の存在が、かけがえのない親友であることに。
やがて、主人公は四畳半の世界を抜け出し、
素っ裸になりつつも、小津のもとに駆け出していくのである。
それは、一回生の時から、一緒に飯を食べ、悪巧みをし、時には争う、
親友の大切さを 自覚した瞬間でもある。
人生を楽しませてくれるのは、まさに小津のような親友の存在であろう。
占い師は言う、
「好機はいつでもあなたの目の前にぶら下がっている」
あなたも孤独の世界に閉じ込められてしまう前に、
積極的に自ら好機を掴みにいってみてはいかがだろうか?