漫学:アニメや漫画を哲学のように紐解くサイト

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「魔法少女まどか☆マギカ」が「美少女戦士セーラームーン」の原点である理由

こんにちは、東野です。 このブログでは、アニメや漫画の世界を文学のように紐解くことで、作者からのメッセージをより深く理解していこうとしています。 本日の作品は「魔法少女まどか☆マギカ」について。

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魔法少女まどか☆マギカ」は、2011年に放送されたシャフト制作のアニメ。中学2年生の少女が魔法少女となり、希望と絶望を繰り返す物語だ。 作品のテーマは、少女(女性)の理想の世界。

美少女戦士セーラームーン」のパロディ?

魔法少女まどか☆マギカ」は、「美少女戦士物」の先駆けとなる「美少女戦士セーラームーン」と類似点が多い。

主人公の類似点

まず、主人公については、「魔法少女まどか☆マギカ」の鹿目まどかも「美少女戦士セーラームーン」の月野うさぎも中学2年生。学年が一致している。ほかにも胸元のリボンが似ていたり類似点が多い。

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鹿目まどか月野うさぎ、学年だけでなく髪型の特徴や制服のりボンなど類似する点が多い

猫の存在

加えて、どちらも猫のようなマスコットキャラクターが登場し物語が始まる。彼らによってごく普通の中学生が戦う戦士へと変身することになる。

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敵キャラクターは心の闇から生まれる

敵キャラクターである魔女と妖魔は互いに人の心の闇から生まれる。欲望や嫉妬や絶望、憎しみなど、心の闇と戦う。

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最後の姿はウェディングドレス

最後に宇宙規模の戦いになり、主人公はなぜかウェディングドレスのような姿になる。女性の究極の姿というのは、ウェディングドレスということなのであろう。

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 いかがであろうか、ここまでで、まどか☆マギカセーラームーンの影響を受けた作品であることは明らかであろう。 「魔法少女まどか☆マギカ」で言うところの魔法少女とは、少女の憧れの存在である。つまり、美少女戦士セーラームーンシリーズやプリキュアシリーズにでてくるような戦う女性ヒーローのメタファなのだ。

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まどかのノートからは、魔法少女への憧れの気持ちが伺うことができる

少女はみんな魔女になる!?

それでは、「美少女戦士セーラームーン」と「魔法少女まどか☆マギカ」の違いを考えてみよう。「魔法少女まどか☆マギカ」の世界では、希望と絶望がセットでおこる。

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「奇跡ってのはタダじゃないんだ。希望を祈ればそれと同じ分だけの絶望が撒き散らされる。そうやって差し引きをゼロにして世の中のバランスは成り立ってるんだよ。」

魔法少女になることを夢見ていた少女たちも、希望を叶えればその対価として絶望に陥ることになり、やがては魔女となるか、あるいは魔女との戦いで命を落とすことになる。

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 希望が叶った分だけ、必ず絶望が存在する。これこそが、魔法少女への憧れの気持ちを絶望へと叩き落とす、魔法少女まどか☆マギカ魔法少女まどか☆マギカたらしめるルールなのである。

キュゥべえは男性のメタファ

他の戦う少女アニメにも妖精などのマスコットキャラは存在するが、「魔法少女まどか☆マギカ」のキュゥべえは、少女と対局の位置に存在するものとして登場する。キュゥべえは少女に時折、理屈っぽく残酷な言葉を投げかける存在だ。 「女性は感情の生き物」という言葉があるが、感情を持たず理屈のみで話すキュゥべえは、夢見る少女に現実を突きつける男性のメタファなのである。 「訳が分からないよ。」というキュゥべえの台詞は、女性の言動に対する男性の気持ちを代弁している。

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「この国では、成長途中の女性のことを、少女って呼ぶんだろう?だったら、やがて魔女になる君たちのことは、魔法少女と呼ぶべきだよね」

その一方、魔法少女を魔女へと変化させるきっかけを生み出しているのも、またキュゥべえ(男性)自身だ。心の中の闇とともに少女が女性へと成長する。その心の闇のインキュベーター(孵化装置)は、少女に希望とともに絶望を与える男性の存在なのだ。

まどマギは、美少女ヒーローの創成物語

ワルプルギスの夜を迎え、一人で戦うほむらであったが、用意した策も歯が立たずに終わる。何度時間を繰り返しても、結局まどかを救うことはできない。そう諦めかけた時、まどかは魔法少女になる決意をする。

「今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね」

という第一話のほむらの台詞に対して、最終話では

「ごめんね。私、魔法少女になる」

とまどかが答える。

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「神様でもなんでもいい。今日まで魔女と戦ってきたみんなを希望を信じた魔法少女を泣かせたくない。最後まで笑顔でいてほしい。それを邪魔するルールなんて壊してみせる。変えてみせる。これが私の祈り、私の願い。さあ、叶えてよ、インキュベーター!!」

因果を断ち切ったまどか

希望と絶望が表裏一体であった世界。まどかは「希望⇒絶望」の因果を断ち切り、希望に満ちた世界を創造する。これは、単に「魔法少女まどか☆マギカ」の世界で完結しない。他の少女アニメの世界の誕生へとつながっていく。 「魔法少女まどか☆マギカ」は、セーラームーンシリーズやプリキュアシリーズのような美少女ヒーローの創成を描いた物語なのだ。 さきほど挙げたまどか☆マギカセーラームーンの類似点も、このように紐解いていくと味わい深い。 全ての少女は夢を見る。「希望と絶望」が表裏一体なんてことは関係ない。美少女ヒーローがキュゥべえによって汚されることのない世界。希望に満ちあふれた少女が夢見る世界が誕生した。

劇場版へ続く

だが、ここで終わらないところが、「魔法少女まどか☆マギカ」の面白い点である。「劇場版魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」によって、ここまでの解釈とは全く別のテーマ・メッセージが見えてくるのだが、そちらは、次回以降で。